紅梅シュプレヒコール

余命10年の紅梅シュプレヒコールのレビュー・感想・評価

余命10年(2022年製作の映画)
3.7
2017年に逝去した小坂流加の同名小説を「新聞記者」「ヤクザと家族」の藤井道人が監督を務めた恋愛映画

小松菜奈主演、藤井道人監督作品ということで積極的には手を出さないジャンルの恋愛映画を鑑賞

題名の通り余命10年の主人公が恋愛や友愛、家族愛といった様々な愛を受けながら自身の結末に向き合っていく物語となっている

今作は著者小坂流加自身の体験をベースに構築された半自伝的な作品であることを鑑賞後に知り、作品を評価するのが一気に難しくなってしまったのが正直なところだが、今回はそういった外的フィルターを排除して感想を書いていきます

物語に新鮮さはなく、病気をタイムリミットに設定し、その中で登場人物間の心の揺れ動きを描くという過去幾度となく制作されてきたプロットではあるのだが、見事な役者陣の演技と臭さを感じない脚本、藤井道人らしい映像表現が今作を良い映画に仕上げてくれている

小松菜奈はもちろんだが、坂口健太郎や松重豊、リリー・フランキーと脇を固める俳優陣も役にマッチした素晴らしい演技を披露しており、俳優陣の力がかなり完成度に貢献しているのは間違いない

原作を読んでいないので比較できないのだが、脚本に臭さを感じる台詞や展開はほとんどなく、真摯に映像化に向き合っている姿勢が見てとれたので、御涙頂戴を意識したお粗末な恋愛映画に対して抱いてきた不快感は今作にはなかった

また、藤井道人の映像も恋愛映画に合っており、演者のポテンシャルを引き出し、ドラマを映し出すのが上手い方だなと改めて実感

総合的に良くできている恋愛作品なので是非鑑賞してみてください