柏エシディシ

イノセンツの柏エシディシのレビュー・感想・評価

イノセンツ(2021年製作の映画)
3.0
傑作「わたしは最悪」のヨアキム・トリアーの脚本パートナー、エスキル・フォクトの監督作。
同じく共同作の前作「テルマ」のサイキック要素はこちらの素養だったようで、北欧版「童夢」といった触れ込み。
ただそういった分かりやすいケレン味よりも、まるでセリーヌ・シアマの作品の様な、子供たちだけの特別な世界を、子供たちの間にだけ存在する空気感を、繊細で丁寧な演出で描く手腕が光る。
「テルマ」の時は観る此方側も、少しジャンル的な欲求を求め過ぎていてこの監督の本質を捉え切れていなかったのでは、と個人的に反省。再見してみたい。
とにかく本作に関しては、主演の子供たちの"演技"が、というより演技とも言えない実在感が素晴らしく、観る人誰しもが、かつては自分もそうであった"あの頃"の感覚を思い起こさせられるだろう。
それはすこし胸に痛みに似た疼きを伴って。
それは、もう名前も忘れてしまった初めての友達と一緒に感じた胸の高鳴りだったり、つまらない諍いやすれ違いで遠ざかってしまった記憶であったり。
それを"超能力"という映画的仕掛けを通して物語っていく訳だが、考えてみれば、子供の時の体験はすべての経験が超特別で冒険であったのだと気付かされるし、だからこそ、この映画で語られる通り、意識的にも無意識的にでも、私たち大人の言葉や行動の一つひとつの重さも考えさせられる。
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