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イノセンツのSSDDのレビュー・感想・評価

イノセンツ(2021年製作の映画)
3.5
■概要
団地に引っ越してきた姉妹。自閉症の姉を持ち両親は姉の世話を中心に生活しているため、まだ幼い妹は自分が構われていないと孤独感を持つ。団地でそれぞれ家庭に事情がある子供達と出会うが、それぞれ不思議な能力を持ち増長し始める…。

■感想(ネタバレなし)
大友克洋氏の童夢に強く影響を受けた作品で、ノルウェー・デンマーク・フィンランド・スウェーデン合作らしく美しい情景と、しばし緊張感のある音響で描く子供達のスリラー。

淡々と描く心情の変化や、能力の発動時に大きなエフェクトはなく絵がわりがないシーンが続くことや、チェロなどによる一定テンポで静かに緊張感を継続的に与えられることで正直眠くなってしまうところに、突然ジャンプスケアの大きな音が鳴り響くため一緒に観に行った友人や、隣の知らない人含めて三人で同時にビクッとしていた。

ジュブナイル映画なのでどうしても思考的に論理的に最適解をすぐには選べなかったりで進まないことはわかるが、正直話に対して尺が長い。

また大友克洋作品を想像するとサイキックバトル漫画を期待しがちになるため、ギャップが強いと言える。
PUSHやクロニクルを期待してるなら系統が異なると覚悟してほしい。

色々と素晴らしい点があるのだが、手放しに人に勧めるのは厳しいなというのが率直な感想。











■感想(ネタバレあり)
・障害を持つ子供
唖の状態であり、意思疎通がうまくできない子供が能力で会話したり念力を使える。友人といると能力が増長し、いなくなってしまうと減るというのがキーになっており簡単なサイキックバトルにはならない展開にしてるのが上手い。

もどかしくどうにかしたくても、妹が直接的に自分で対峙することを選択して成長を遂げるに至る経緯となるのも素晴らしい。

・猫
猫の落としたシーンですでにこの男児は足の指を一本づつ折る刑を課すと思っていたが、殺害するシーンは目を背けてしまった。この時点で"あと5分以内にこのガキは死ね"と思っており正直気分を害した。
もちろんサイコパス、ソシオパスな殺人犯の背景に子供の頃に小動物を殺した経験の延長から増長し始めるのは知っているが表現が直接的すぎて辛かった。
この時点で映画として減点。あんなかわいい飼い猫である必要あったんか。

・能力
テレパス、幻視、幻惑、サイコキネシス、能力増長が能力の全てか。
姉:テレパス、サイコキネシス、幻惑
妹:サイコキネシス、増長
女:テレパス、幻視、増長
男:テレパス、幻視、幻惑、サイコキネシス
こんなところか。
人を操る際には幻覚を見せて操作しているが、操っている間の肉体にダメージが及ぶと自身にも返ってくる様子。男児を退けた後、母親を殺めたと男児が精神的に追い込まれてたことから、おそらく姉にも幻惑能力あり。
男児は幻惑でその人のトラウマを見せることで操るという手法を確立した様子。
単純に能力を何度も使えば増長するわけではなく、練習量でコツを掴んでいるのかもしれない。

最後の対決では能力発動中に、赤子が泣き、建物のベランダに幼い子供達が顔を出していたから、ある程度の年齢または精神的未熟度までで目覚めるか使えるようになることが条件かもしれない。

・総評
退屈な夏休みという永遠に思える時間の中で、幼少の頃に能力に目覚めたらという思案を根底に、団地という空間の中で知られざる間に繰り広げられる殺戮が忌まわしい。
総じてテンポの遅さや独特の間が、お国柄を感じさせ少し退屈さも感じるため何度も観たい作品ではないが、映画慣れした人にしか薦められない怪作である。
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