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イノセンツのinazumaのレビュー・感想・評価

イノセンツ(2021年製作の映画)
4.8
キッズ版『スキャナーズ』!?
…最近北欧映画がアツいですがまたドえらい作品と出会ってしまった。

超能力を持った子供たちが団地でキャッキャと戯れる。遊び目的であった力はやがて、主である無垢な子供たちが家庭環境や人間関係に翻弄されることで凶器となり、子供たちの戯れは大人をも巻き込み攻撃へと変わっていく…

超能力を描くときに、それを脅威ととるか奇跡ととるかで作風が大きく変わりますが、個人的にドストライクなのは前者です。『スキャナーズ』は冒頭の○○爆発で超能力の恐ろしさをこれでもかと見せつけられ、クライマックスでの危険な力のぶつかり合いに恐怖すると同時に、その凄まじさに説得力を持たせていました。邦画だと『CURE』では、超能力がというより超能力者そのものがとにかく怖い。ワケの分からない怖さ。催眠術により間接的に猟奇殺人を繰り返す男が終始淡々としていて目的も分からないところが本当に怖く、またそれが黒沢清独特の不気味で静かな世界観で描かれていて、"恐怖"と"ワケが分からないことの心地良さ"を味わうことができました。
超能力、超能力者、超能力の使い方に対して恐怖する。"サイキックホラー"なんていいますが、生身の人間では対処しようのない想像を絶するモノということから幽霊や自然災害と同等であり、超能力が描かれてる時点でジャンルは常にホラー(またはディザスター)であるべきだと思うのです。もちろん後者(『X-MEN』とか笑)についても好きな作品はたくさんありますが、やっぱり超能力は怖いものであってほしい。
本作『イノセンツ』は前者にあたりますが、もうドンピシャで最高でした。すごい(というか上手い)のが超能力者である無垢な子供たちが脅威であることは確かなのですが心の底から恐怖することができない。すごい変な感覚。無垢であるがゆえの残虐さもきっと誰しもが通る道であり現実そのもの。「超能力の恐怖」と「現実と地続きの恐怖」の合体!観てる間、ずーーっと変な感覚に陥っていました。そして同時に心地良い。その状態でむかえるあのクライマックスは秀逸。まさか最後に「カッコいい」と思えるとは。アナ姉は自分の中で忘れられない最高のキャラクターになりました。

不穏な"逆さま"演出も大好物でした。
なぜ逆さまなのか?いろいろあると思います。恐らく答えなのかなと思えるシーンがありましたが、このシーン、心底ゾッとした。。
…外の広場で自転車に乗る子供たち。天気も良くて、自転車の下には影ができてます。この光景を逆さまにすることで、子供と影が反転し、まるで影こそが実体で、その下から見映えだけの子供たちがスゥッと映っているように見えます。子供というのは実体が掴めない生き物であることを表しているのかなと思いました。ここは確かほんの一瞬のシーンで、目を疑いましたが、もう一度観て確かめたい!

ありそうでなかった映画。恐怖の子供映画は数あれど、本作は明らかに一線を画していると思いました。エスキル・フォクト、次回作が大いに期待できる映画監督がまた出てきてくれて嬉しい!
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