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イノセンツのyumeayuのレビュー・感想・評価

イノセンツ(2021年製作の映画)
4.0
"童夢"

超能力を持った子供、団地…。
キャラクターから舞台設定まで、否が応でも大友克洋の傑作漫画『童夢』を重ねてしまう。

調べてみると、やはりエクトル・フォクト監督は『童夢』からインスピレーションを受けているとのことで、日本公開後、日本人には本作がその影響下にあることがあっさりとバレてしまったそう。

いやいや、だってこれインスピレーションとかオマージュといったレベルではないでしょ。まさしくパ○リ…じゃなかった、北欧実写版とでもいうべきでしょうか。

物語はノルウェー郊外の住宅団地が舞台。
夏休みに友人同士になった4人の子どもたちは、大人には言えない隠れた能力を持っていた。子どもたちは団地の裏の森などで能力を試すが、好奇心が故に遂に一線を越えてしまう…。

この映画、何が怖いって、全ては子供の無邪気さにある。
何よりも好奇心が先行してしまい、良し悪しが想像できないからこその危なっかしさ。ほんと子供って何考えてるかわからなくて、予想外で突拍子もない行動を取るから、怖い。
そんな子供が大人も制御できない超能力を持っていたら? これは考えるだけでも恐ろしい。

物語の中盤以降は、暴走する男子を女子チームが止めようとするのだが、大人は介入せず、あくまで子供たちだけの世界で進行していくところが本作のおもしろさ。

確かに大人と子供では世界の見え方が違うし、あの子供たちにとっては、あの団地が世界の全て。その世界の中で、子供同士で戦いを繰り広げるというのが、すごくジュブナイル的なドラマチックさを感じた。

北欧ホラーらしく、終始物静かで淡々としているのだが、『童夢』に影響を受けているということもあってか、どこか少年マンガ的な魅力を感じる作品だった。
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