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パラレル・マザーズのSPNminacoのレビュー・感想・評価

パラレル・マザーズ(2021年製作の映画)
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同じ産院で同じ日に出産したジャニスとアナ。2人のシングルマザーと2人の娘、更にアナと母親、現代と内戦時代、いくつも交錯するパラレル構造で一筋縄じゃない。それを導くのはDNA。伝えられる記憶。
わたしの娘はあなたの娘、あなたの娘はわたしの娘。ジャニスとヘアスタイルを変えて別人のようになったアナは同士となり恋人となり、居場所を与え料理を伝える。娘より女優(しかもそれが母役を演じる入れ子構造だ)を選んだアナの母は反目しながら味方になる。女は一つの属性や関係に収まらず、主体的に流動的に動き続けるが、根っこは動かない。かといって、子どもが重要不可欠でもない。時に、ベビーモニターに映る赤ん坊は不安や恐怖を掻き立てもする。男は殆ど種扱いというか、姿形だけしか残すものがないようなもので、セックスした次の場面でもう妊婦!って展開が笑っちゃうくらいシンプルでいい。
何度か闇に吸い込まれるような場面転換が印象的で、その闇に葬られた側、忘れてしまおうとする側がいる(ジャニスもそうだ)。なす術なく突然消えてしまう家族がいる。「内戦時に家族がいた場所を知ることで、自分の居場所が決まる」と、犠牲者の遺骨発掘にこだわるジャニスは言うが、撮る写真も飾られた写真も忘れないように残すその地図、証拠のDNAのよう。
闇から掘り起こされた遺骨を埋葬する場には、ジャニスを中心にアナも娘も親友(ロッシ・デ・パルマ!)も、自然と各世代が集まっている。死は生に、過去は現在に接続する最後のショット。アナの名前は回文で、また次のアナ(或いはアントニオ)に途切れなく続いていく。とてもアルモドヴァルらしい形で突きつけるスペインの暗部は、同じく独裁政権の犠牲者を発掘するチリのドキュメンタリー『光のノスタルジア』を思い出した。
静かに不穏で悲劇的な音楽が背景でザワザワさせつつ、グイグイと劇的に引っ張っていくペネロペ。スパニッシュオムレツとか、作る料理がすごく美味そう。さすがアルモドヴァル、部屋のインテリア、特に壁の絵画が素晴らしかった。
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