Omizu

パラレル・マザーズのOmizuのレビュー・感想・評価

パラレル・マザーズ(2021年製作の映画)
3.8
【第78回ヴェネツィア映画祭 女優賞】
『オール・アバウト・マイ・マザー』ペドロ・アルモドバル監督作品。ヴェネツィア映画祭でプレミアされ、主演のペネロペ・クルスが女優賞を受賞した。アカデミー賞でも主演女優賞、作曲賞にノミネートされた。

アルモドバル作品はどうも物語に入り込めない。本作もいつものアルモドバルという感じでそこまで深く惹かれなかった。

同じ日に出産を迎えた二人の女性を描きつつ、スペイン内戦という暗い過去を照らすような一作になっている。

アルモドバルの色彩感覚はやはり素晴らしい。ビビッドは色使いの映像で見せていく。メインビジュアルである赤の使い方が印象的。

そしてペネロペ・クルスの演技もすごくいい。母というものを多面的に捉えるアルモドバルの手腕もあり、ジャニスという人物を見事に演じていた。

ただ、ジャニスがアナに真実を伝えたあたりからやや失速。そこから先描かれるのはスペイン内戦の話なのだが、展開がイマイチ甘い。もちろん大事なテーマではあるが、物語が急にスピードを失ったように見える。

娘への愛、異性愛、同性愛、家族愛という複数の愛を並列的に描くのはアルモドバルらしい。愛というものの底知れなさを多面的に捉える視点はいいと思う。

ただやはり終盤の展開にあまり興味を持てなかった。アナに伝えた段階で話は終わっている。そこから急に内戦の話に持って行くのに違和感があった。

アルモドバルの感性が光る作品だとは思うし、自国の歴史に目を向けた視点は評価すべきかも。いい作品だとは思う、でもちょっと違和感が残る終盤が残念だった。とはいえアルモドバル作品の中では一番好きかも。物語の語り口や色使いを含めた映像もステキ。
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