湯っ子

The Hand of Godの湯っ子のレビュー・感想・評価

The Hand of God(2021年製作の映画)
3.8
パオロ・ソレンティーノ監督の自叙伝。
美しいナポリを舞台に、少年が喪失を経験し、それを乗り越えてローマへと旅立つまでを描く。
全編を通して少年の目線で描かれており、彼の世界には幻想が現実にとけこむように存在している。私たちひとりひとりが見ている世界を映像化したとしても、もしかしたらこんなふうに、虚実綯い交ぜになるのかもしれないと思った。
主人公ファビエットの心のなかにはずっとマラドーナがいて、まるで守護天使のように、彼のいのちをその「神の手」で守ってくれた。そしてナポリを旅立つ時に彼を叱咤激励し、背中を押したのがフェリーニなのかな。愛する両親を亡くし、友達もいない孤独なファビエットだけれども、自分の心の中にメンターを招き対話するという素晴らしい能力とたくましさがあった。そばで励ましてくれたお兄ちゃんの存在も忘れちゃいけないね。

女性や障害者への言動について。現在のポリコレにはそぐわないかもしれないけど、時代性や地域性からしたら、そういうのを「なかったもの」として描くやり方よりはマシなんじゃないかと思う。ひどいことを言う方だってロクなもんじゃない、「目クソハナクソ」に描いていて、むしろフェアに感じるくらい。
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