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死刑にいたる病のRKのレビュー・感想・評価

死刑にいたる病(2022年製作の映画)
4.3
阿部サダヲの言うように、
そっちの世界に行くと戻ってこれなくなる、というのはとてもしっくり来る。

こっちの世界でギリギリを保っている人はいる。ていうか、人間なんてみんなその綱渡りなのだけれど、それでもやはり淵ギリギリの奴らはいるわけで、何かの弾みでそっちへ行っちゃうんだろうなと。

この映画の味噌は、普通ならサイコとして片付けられてしまう人物の精神構造に挑んでいった点だと思うのだけれど、改めて天性のサイコなぞ存在しないと思ったなぁ。彼らの行為は明らかに外部環境(大方は幼少期)に依存していて、だからこそ「病」なんだな。自分の裁量で獲得した癖じゃないわけだから。

なんか泣けたな普通に。どんなに苛烈な環境で育って、人を痛ぶる他に実存を見出せない人間になっても、やはり他者が必要なんだというところは。キミが僕の子供だったら良かったのに、という彼の言葉はもちろん真実だと思うし、それが善から発せられるものなのか、悪から発せられるものなのか、なんて、誰に判断できようか。そこには純粋に、「貴方が必要なのです」という現象が横たわっているだけなのだから。

貴方を愛したい、という他者性も
貴方を殺したい、という他者性も
同じ求愛行動なのであって、両者共に切実なのである。後者の方が、実生活では受け入れられない分、その分が大いなる前振りとなって、逆境となって、物語を生み出すんだな。その求愛行動は、あまりにもやり遂げるのは難しく、迫害され、孤独になるからこそ、その純度だけを見つめた時、我々は涙するんだ。

追記
あとラストの放火は
タルコフスキーの鏡のオマージュかなと思った
RK

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