Millet

死刑にいたる病のMilletのネタバレレビュー・内容・結末

死刑にいたる病(2022年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

話題になっていたが映画館に行くタイミングがなくてNetflixで公開されるのを待っていた。
まず初見であれ?思ったより面白くないぞ?と焦って続けて2回みた。

確かに阿部サダヲの榛村大和は不気味だし、目にハイライトがなく、サイコパスという感じをうまく演じていた。
主人公の筧井雅也が榛村とはじめて面会した時は事件の詳細について話そうとする榛村を制して面会の終了を告げていた刑務官。何度目かの雅也との面会のシーンでは刑務官と榛村と親しげに「アンの結婚なんかいいですよ」と話している。
刑務官すら洗脳済みなのだ。

雅也自身も事件の真相を暴こうと榛村とやりとりを重ねているうちにどんどん気性が荒くなり、人に危害を加えてしまうようになる。
これが『死刑に至る病』の状態なのだと思う。
病であるから感染する。
鬱は感染ると言うが、同じ理論なのだろう。
死刑に至る病の元ネタはキルケゴールの『死に至る病』だ。死に至る病とは絶望、特に神を信じることが出来なくなった絶望感のことである。

榛村がどんな理由をもって人を殺していたかはわからないが、簡単に人が人を信用して騙されて都合よく手のひらで転がされてしまうことに、ある種の絶望感があったのだろう。
ちなみにその榛村の絶望や孤独は映画の中では語られていない。
そして榛村の周りの榛村に気を許してしまった学生達や近所の人たちは、なぜこんな見知らぬおじさんを簡単に信用したのか理解できない。
ゆえに榛村のサイコパスさがコメディのように見えてしまってイマイチ入り込めなかった。

ただこの映画、最近の邦画の中ではダントツの死体クオリティなのでそこは評価出来る。
全身の腱を切られた女の子の手首の骨が出ていたのも良かった。切り傷の断面がすごく丁寧に切られたであろう感じも、榛村がこだわったポイントなのだろうなということが伝わってくる。
泥の中で殺された女性の目の飛び出方も良かった。
阿部サダヲの目の皿具合と、死体クオリティだけで星多めにしたくなる映画だった。
それでもやっぱり面白いかと言われるとわからない。
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