からかす

ある男のからかすのレビュー・感想・評価

ある男(2022年製作の映画)
4.0
まず安藤サクラが抜群。
息子や夫を喪失した悲しい女性であり
それでも日々を強く生きなきゃならず
そして息子に対し温かく包み込む母親を
本当に見事な演技で演じられている。
亡くなった夫が正体不明と分かる瞬間の
「えっ何言ってんのこいつ」感とか素晴らしい。

物語としてある男Xが誰なのか
先の見えない展開がまずミステリーとして非常に面白い。
ある男Xを失った安藤サクラ母子と
ある男Xを追う妻夫木弁護士が辿る帰結は
一見まるで異なるもののように見えるけど
とどのつまりは"逃避の肯定"じゃないかと感じた。
エッセンスとしてアイデンティティーやバックボーンなど
それらにどう向き合うかという要素も散りばめられていたけど
結局は個人の衝動によるものだと。
そしてその逃避は決して悪い結果を生むばかりでは無い。
マグリットの絵のように自分を見つめるばかりでなくて良いぞと
そんな風に感じた次第。

劇中の白眉は柄本明との2回目の面会シーン。
あそこはゾワッとして良かったね。
最近イチオシの河合優実も出ててこれも満足。
からかす

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