謎解きミステリーとしても上質だけれど、名前・顔・家などアイデンティティの物語。
自分が何者だか分からない状況にまで貶めなければ、自分を守れない人たちがいる。
家を出たいとか、親や家族から離れたいとか、誰でも一度は思うようなことだけれど、そうしなければ苦しくて生きていけない人。「ある男」は、きっとどこにでも存在する。
暗さや息苦しさしか感じられない映像の中で、終始物語に強さと温かさを感じさせてくれた安藤サクラの佇まいが本当に素晴らしかった。
出てきたとたんに「この人、美しいな」と思えてしまう妻夫木聡の「鏡」、窪田正孝の「虚」、柄本明の「怪」。日本の役者さんの良い所を綺麗に収めたキャスティング。
こういう映画が海外に出るのは嬉しい。この国の差別も迫害も貧しさも、そして温かさも、すべて伝わる秀作。