たむ

ある男のたむのレビュー・感想・評価

ある男(2022年製作の映画)
2.9
ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門のコンペティション入りしたミステリー映画です。
ズシンと来るようで、人間の存在を考えさせてくる、最近の邦画に多いタイプの映画で、イヤミスジャンルにも入りそうな印象です。
死んでしまった夫は一体誰だったのか?

オープニングからなかなか濃厚な雰囲気が漂い、期待を高まりました…。
しかし、二人の登場人物が「誰なんですか?」と声を合わせた瞬間に、この作為性は何なんだ?と一気に引いてしまいました…。
社会派ミステリーとして、在日朝鮮人やヘイトスピーチやいろいろなテーマを入れてきますが、最終的に物語と結びつかず、それぞれの場面やセリフが浮き上がってしまいます。
沸騰する直前で火を消されるような、煮えきらない雰囲気が漂います。
この煮えきらなさが、今の日本なのかも、というある種のリアリティなのでしょう。
では、映画としてどうか、と考えると、個人的には、もっとなんとかなったでしょう、という気持ちです。

ミステリージャンルでテーマとセリフと物語が噛み合わない、バラバラなもったいなさ。
おそらくそれは意図されたものだと思うのですが、意図と浮かび上がってしまうセリフと演出が噛み合わない事を意図して、それを観た観客に何を感じ取ってほしいのか。
あるいは面白いと思ってほしいのか。
役者さんの演技でかなり救われている映画です。
『告白』以降、こういった作品は多いですが、本当に難しいですね。
たむ

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