のぞみ

ある男ののぞみのネタバレレビュー・内容・結末

ある男(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます


名前や親、過去、すべてがつながっているようで、すべては分裂しているのかもしれない。

死刑囚の父親にそっくりな自分を嫌う息子が自殺未遂や何度も名前を変え、自分を上書きしていく。
貼られたレッテルは剥がしたくても剥がせない。
自分は自分、ただの個と考えるのはむずかしい。
簡単に名前は捨てられないし、合法的に別人にもなれないし、ここまでしないと生き直せないひとがいるということを考えたことはなかった。

ほんとうの彼を知っても、彼と過ごした日々は失われないし、塗り変わらない。
ボクシングの会長たちだってそう。
世間やなにも知らないひとたちは、死刑囚の息子と呼ぶけれど、彼が里枝さんに出会い、家庭を築けたのはよかったし、人生のすべてだったのはたしかでしょう。

そして、城戸さんもまた別のだれかになりたいのかもしれない。
ラストのバーでの話、初対面のもう会うこともないであろうひとの前で話す家族は、彼にとっての理想なのか逃避なのか。
なんと名乗ったのか気になる。

自分を生きることがいやになることも、ほかのだれかの人生を羨むことも多々あるけれど、みんなそれぞれなにかあるのかもしれない。

原作気になる。読んでみようかな。


「私は一体だれの人生と一緒に生きてきたんでしょうね」
のぞみ

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