シエン

ある男のシエンのレビュー・感想・評価

ある男(2022年製作の映画)
3.3
他人になりすまして、他人の人生をベースにすることで、本当の自分の苦しい人生を忘れていく試み。
そんなことが描かれた映画なのかも。
こういうストーリー見ると、人生とは記憶なんだと思わせられる。
そして、確かな手応えのある記憶と、それをもとにした様々な形での人との関わりが、生きるうえでの幸福感などに大きく関わってくるのだろう。
もし自分を形作る記憶が、ごっそりと"自分より幸せそうな他人"の記憶と入れ替わったなら、そのことを自分が知らないままに行われたなら、入れ替わった瞬間に苦しみから逃れることはできそう。
もし入れ替わった他人が、今はなにもなさなくても評価される状況の人物であったなら、成り代わった者はその他人の恩恵を受け続けやすくなりますよね。

映画を観るという行為も、少しでも他人の人生を追体験する事で、今のリアルの自分の人生の苦しみを忘れようとする試みなのかもなどと、悲観的に思ったりしました。

もう一つ別の苦しみから逃れる方法は、ボケてしまうことでもあるのかもしれません。記憶が欠けていき、昔の幸せだったことぐらいしか思い出せなくなれば、それはそれで幸福なんだろうと思います。
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