無影

香川1区の無影のネタバレレビュー・内容・結末

香川1区(2021年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

自分はただ新聞やニュースを見て票をパッと入れに行くだけの選挙に、これだけの熱量を持って臨んでいる人がいる。そんな当たり前のことをこれまであまり認識していなかったなと気付かされた作品でした。選挙をより身近に感じられました。
本作を、平井氏同様に、小川氏、ひいては立憲民主党のPR映画と批判する向きがあります。確かに、本作が両者にもたらすPR効果は小さくはないでしょう(選挙事務所には前作のポスターも飾られていましたしね…笑)。しかし、それは監督が意図的にそう見えるように演出しているというよりは、小川氏と平井氏を同じ土俵に立たせてみたら、自然と両者の違い(≒平井氏が悪く見える)が浮かび上がるという描かれ方だったので、平井氏には、本作をプロパガンダ映画と声高に批判する前に、演説を撮りに行ったプロデューサーのカメラを遮って脅しをかけたり、パー券を配って強制的に脱法献金を徴収したり、組織票確保のために投票しに行った人を投票所の隣のビルの1室に集めて名簿に記入させたりといった自身の身の振り方を改めてもらいたいものです笑
両者の対比で一番印象的だったのは、出陣式にて、小川氏は市民に登壇してもらっていたのに対し、平井氏は地元の有力者などに登壇してもらっていたというところでしょうか。小川氏は地元で演説に立った時も、誰とも分け隔てなく、積極的に双方向のコミュニケーションを心がける一方、平井氏は自分に都合の悪い人間を「立憲」と一括りにして敵認定し、合理的な理由も告げずに追い出そうとする。本作を観てもどの候補所が当選するのが正解だったのかは分かりませんでしたが、少なくとも、「自分は51%の得票率で勝った。残りの49%も背負う」という人ではなく、お友達だけ囲って仲間のためだけの政治を進める人間が大臣などになっているうちは、この国にまともな民主主義は育たないだろうということだけは分かりました。
また、本作を観て、今後の日本の政治に少しだけ希望が持てました。小豆島の住民で、昔からの縁でずっと自民党に投票してきたという人が、「本当は小川さんに投票したいけど、義理があるから」と自民党に投票していると明かすシーンがありましたが、やはり国民はちゃんと与党がこれまで何をしてきたかちゃんと見て、ちゃんと評価しています。なので、もっと1人1人の1票が純粋な意見表明の手段であれば、日本の政治もきっと良くなっていくのではないかなと思いました。
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