シャチ状球体

香川1区のシャチ状球体のレビュー・感想・評価

香川1区(2021年製作の映画)
3.9
チケットぴあのオンライン上映にて視聴。

前作も含めて、大島監督のスタンスとしては"何故自民党が選挙に強いのかを探る"ということだと思うんだけれども、今作はその地域に根差した強大な地盤と崩れかけた民主主義の両方が伝わってくる力強い映画だった。

今作での小川淳也は平井卓也とは対照的な爽やかさを表現するためにだけ登場している感がある。なので、正直もっと自民党側の視点からこの選挙を見てみたいと思ってしまった。
小川淳也の人間性は既に前作でかなりの時間見ているので、香川2区の玉木雄一郎の"政治家らしさ"や平井卓也個人を更にクローズアップすると、香川1区ひいては日本の選挙システムの歪がより際立ったのではないだろうか。

映画本編よりも終了後のトークショーの方が興味深かった(玉木雄一郎が何故野党にいるのか……という話は合点がいく)気がするのは、この映画全体に漂う既視感のためだろう。であるがゆえに、田崎史郎のシーンや投票のシーンと言った前作にないシーンばかりが印象に残り、それ以外の全てに新鮮味がなくなってしまっていることは否めない。もちろん、香川1区の熱気が全国に広がってほしい……という台詞はその通りだと思うけれど。

最後に、劇中で一番怖いのは知らないおじさんが詰め寄ってくるシーン。男性から同じような詰め寄られ方をされた経験がある人が見るとその記憶が蘇ってくるぐらいの恐ろしさがある。次回作は「何故君は他者に対して高圧的になれるのか」というテーマの映画を……観たいような観たくないような。
シャチ状球体

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