実際の｢にっき｣を元に展開していく、奇想天外なアイデンティティ確立譚。
本作は監督のイメージが先行しており、目は楽しいながらも、見づらさが付きまとう作品でした。ミスリードとして読み取れる箇所もあるのですが、そちらも自覚的だとは思いつつ、難解さの方に意識がいってしまうのは否めませんでした。
と、ここまで評価し難い箇所を中心に語ってきましたが、私としては本作のバランスと言いますか、具体と抽象の塩梅が良かったため、一丁前に感動してしまいました。
本作の本質は主人公のアイデンティティの確立であり、その出力方法として選ばれたアニメーションが豊かに表現されている、ミニマルな規模感の中では最良のアプローチであったと思います。
映画作品として効果的な反復が見られるのも良く、表現を読み解けば真っ当で、洗練された流れがあることが分かります。幼少期あるあると言えるような、友だちとの関係性の描写は思い当たる節がある方も多いのではないでしょうか。冒頭の歯磨きあるある描写で、説明臭くなく作品の方向性を示しているのも、スマートな導入だなと感じました。
総じて、｢誕生日おめでとう｣に泣かされてしまう、奇天烈で楽しい作品でした！
