たく

さがすのたくのレビュー・感想・評価

さがす(2022年製作の映画)
3.8
作りが上手かった!
ネタバレ厳禁系の作品で、予告編を見ても内容がさっぱり読めない。劇中で起きる事件の犯人は割と序盤で分かるようになってて拍子抜けしたんだけど、本作最大の魅力は佐藤二郎演ずる父親が何者なのかっていうサスペンス。「岬の兄妹」の片山慎三監督が、本作でも白黒に割り切れない人間の業を描いて見事だった。まあ、だいぶ荒唐無稽な話でリアリティを失いかける場面はけっこうあったように思う。

指名手配中の連続殺人犯を見かけたと娘に告げた父親がその翌日に失踪する話で、娘が父親を探しながらその人の真実に迫っていくのが、ちょうど吉田恵輔監督の「空白」の父娘関係を逆転させた図式に思えた。題名の「さがす」には、父親探しと真相の追求という二重の意味が込められてた感じ。佐藤次郎のクチャラーに始まって人の生理現象を生々しく見せるのが本作の片山慎三監督の「岬の兄妹」にも通ずる。

時間軸をシャッフルし、同じ場面を後で違う角度から見せるという良くある手法が手際良い。ウディ・アレンの「マッチポイント」?って思ったところからの卓球シーンの長回しの使い方が圧倒的に上手くてここは思わず唸った。リスト「愛の夢」の対位法的な使い方もグッド。
役者は佐藤二郎の一切のギャグを封印した陰のある演技がもちろん良かったんだけど、楓役の伊東蒼の自然な感じが素晴らしい。彼女は「空白」にも万引き娘役で出てて、今後注目の女優さん。森田望智の、絶望してるからこそ表向きあっけらかんとしてる感じも印象的。
たく

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