ユーライ

さがすのユーライのレビュー・感想・評価

さがす(2022年製作の映画)
3.5
『岬の兄妹』がベストだったので期待との落差がある。とにかく「変わった事をやりたい」が優先になり過ぎていて、スケールを広げた結果手に余って暴走している印象。『岬の兄妹』は二人の世界に絞ったことによって監督の資質が良い方向に作用していただけの疑惑が生まれてしまった。時系列を行ったり来たりする必要があまり感じられず、過去から現在まで戻るといちいち説明のために1カット用意するのが上手くないしただただ煩雑。じゃりン子娘の父親捜し青春奮闘記か、追い詰められた親父と快楽殺人者の奇妙な共犯関係からなる実録タッチのどちらかに視点を絞った方が見やすかった。エンタメとしてサービス精神旺盛なのは良いとしても、動きまくるカメラといい、もっと落ち着いてほしい。クチャラーであることが父娘のキーになる生理的嫌悪を催す描写を果敢に取り入れる姿勢や、個室トイレでの泣くべきか笑うべきか分からない感情の揺れを映しとる確かさは継続されているから余計に惜しい。快楽殺人者の設定は明確に近年の事件をモチーフにしているのだが、その割には終始単なる「快楽殺人者A」でしかないのは拍子抜けした。切実さもなければ実在感も希薄な、父と娘の間に湧いて出たサイコでしかない。生理に基づく犯行だとして、仮にも社会派であるならもっと具体的な動機が必要不可欠だった。この漫画的な人物造形の有り様にどことなく漂う不真面目感が象徴されている。
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