櫻イミト

フリークスアウトの櫻イミトのレビュー・感想・評価

フリークスアウト(2021年製作の映画)
3.5
「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」(2015)でデビューしたガブリエーレ・マイネッティ監督の第二作。超人サーカス団とナチス・ドイツが戦うゴシック風味のサイキック・バトル映画。

デビュー作が好みだったので期待して鑑賞。カルト監督のイメージだったのが、クセは残しつつも驚くほど大規模なエンターテイメント作を作り上げていた。

タイトルに引用されている通り発想ベースは「フリークス」(1932)とのことで疎外者・障碍者の活躍を描いている。しかし画面に暗さはなくナチス対レジスタンスの戦闘描写も派手に繰り広げられ、結果的には「X-MEN」の前日譚のような仕上がりだった。

オタク系監督らしい引用も随所に感じられた。ヒロインと3人の仲間というメンバー構成は「オズの魔法使」(1939)、ナチス・ベルリン・サーカスの悪趣味な美術は「ピノキオ」(1952)や「リリー・マルレーン」(1981)、ヒロインの能力爆発は「炎の少女チャーリー」(1984)を連想させた。

総じてかなり好みの世界観で殺戮描写にも遠慮がなく、面白いエンターテイメントだった。戦闘シーンにも個性と迫力があり、マイネッティ監督はそのうちMCUかDCからお呼びがかかるかもしれない。

惜しむらくは”悲しみ”が物足りなかったこと。ゴシックには不可欠な軸であり本作でも一応は描かれているのだが、もう一歩踏み込めればさらに傑作になったと思う。

※エンディングロールに鋼鉄ジーグのイラストが使用されていた。監督は本当に好きなのだなとホッコリした。

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