ぺん

ロスト・ドーターのぺんのレビュー・感想・評価

ロスト・ドーター(2021年製作の映画)
4.0
マギー・ギレンホール監督作品、オリヴィア・コールマン主演。
なんだか心がざわつくというか、粟立つというか。
ギリシャにあるリゾートの眩しいほどの明るさと、主人公レイダにちらつく影や不穏さ、不安定さが対照的。
レイダは自分と同じ轍を踏みそうな若いママに過去を重ねてしまう。

レイダみたいな人はなかなか好感を持てないけど母親目線から見ると共感してしまう部分はあるな…
「私には母性がないの」と言いたくなる気持ちは分かる。
母性って女に育児の負担を押し付けるための口実にされてる言葉なんじゃない?と個人的に思うので。
レイダも一見開き直っているように見えて、母の立場よりキャリアや女を優先した自分自身を決して誇っているわけじゃない。許しも求めていない、だけど…

レイダを取り巻く男性陣も気の毒だが、根本的なところで彼女を理解しようとしないというより出来ない描写、
おばちゃんが注意しても全く聞かねえヤンキーが、おっさんに一喝された途端に態度を翻すのは身に覚えがあるリアル。
人形が母と娘を繋ぐキーアイテムでややサスペンスタッチであり、白鳥とレダとギリシャ神話もモチーフ。

観る人によってかなり解釈は変わるんだろうな。
母親や女に限らず、こうあるべきだというイメージやレッテルに苦悩した人の後悔を否定も肯定もせず描いている。
がっつりフェミニズムな作品ではない。
娘からの目線は排除されているので彼女たちの本心は分からないが最後の最後に唸らされる。
まぁ楽しくはないし、誰にでも勧められる作品ではないかもしれないね。
しかしコールマンの静かな演技や表情はさすがの見応えで素晴らしい。彼女はどこか愛嬌があるから悲壮になりすぎない。
ボンジョヴィで踊るエドハリスも可愛かった。
万人受けしないだろうが問題として抱えている人は多そうなテーマを果敢に描いてくれたマギー監督、評価されてほしいな。
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