コマミー

モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーンのコマミーのレビュー・感想・評価

3.8
【クソだらけの世界】


※fans voice様の試写会にて鑑賞



「ザ・ヴァンパイア」や「マッドタウン」で映画祭を熱狂させた、イラン系アメリカ人の"アナ・リリ・アミリプール"。
そんな彼女がイ・チャンドンの「バーニング」で知られる"チョン・ジョンソ"を主演に迎えて、この"腐った世の中"に銃弾を打ち込む様な快作を発表した。

チョン・ジョンソ演じる"モナ・リザ"は、"統合失調症"を患っていて、長い間精神病棟に閉じ込められていた。

しかし彼女は、ある"特殊能力"を持っている

     "人を操る能力"だ。

彼女はこれを利用して、スタッフに怪我を負わせ精神病棟から逃げ出し、逃亡犯となった。逃亡中に出会ったイカした不良の"ファズ"やポールダンサーで一児の母のボニーと出会い、金や暴力が渦舞う外の世界で自分の居場所を見つけようとするが…。

チョン・ジョンソ演じる超能力者の女が巻き起こす大事件を描いた作品だ。世の中には彼女を助ける人間はいるが、下心や金目当てでやってくる"自分勝手なクソ野郎"は外の世界には大勢いるわけで、彼女は外の世界でそれを見る上で自分に襲いかかるものに容赦なく自分の能力で攻撃しながらも、前に進む物語となっている。
アナ・リリ監督は、作品を通して"女性が置かれている酷い立場"やこの世の中の不条理さを、かなり"ファンタジック"に描いてきた。本作はその中でも"ダントツにストレート'にそれを描いていて、モナ・リザというアンチヒロインが自分の力で自分の眼でそれを切り開いて伝えてくれる作品であった。

本作では何よりチョン・ジョンソの演技が怪しさを光らせていて最高だったのだが、"ケイト・ハドソン"演じるボニーの自分勝手なんだけど本当は子供思いのお母さんっぷりがとてもよく表現されていて良かった。
"クレイグ・ロビンソン"演じる主人公を追う警官もとてもパンチが効いていて良かったし、"ボニーの息子"を演じた"エバン・ウィッテン"の演技もすこぶる良かった。

あと特別高く評価したいのは、本作の"音楽"。
主人公の"精神状態"を表現しているだけでなく、この世の中のクソさをも表現している何とも独特な音楽であった。

特別高い評価ができる作品ではないのだが、音楽の独特な重低音やモナ・リザが切り込む世の中の不条理さを描いた点については、本作を劇場で観る価値はあると感じた作品だった。

あと純粋に、チョン・ジョンソのハリウッドデビュー作としても良い滑り出しだったのではないかなと感じました。この作品をチョイスするのは流石ですね。
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