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ベルファストのCrispyのネタバレレビュー・内容・結末

ベルファスト(2021年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

何の予備知識も入れずに鑑賞。
人の繋がりの強い街、ベルファストで暮らす少年バディの視点から、北アイルランド紛争の様子を描いた作品。
基本的には、バディの楽しい日常を描いており、裏で徐々にきな臭くなっていく感じがリアルさがあった。
この映画のポイントはなんといっても、バディ目線の世界の美しさとあたたかさだろう。
大好きな両親、兄、祖父母。学校での生活。そのどれもが魅力的で満ち足りた様子がしっかりと描写されている。
特に、祖父母との交流が心に染みる。チャーミングで大切なことを教えてくれるおじいちゃんと、いつも見守ってくれるおばあちゃん。
バディは皆のことが大好きで、皆もバディのことが大好き。
そんな幸せであたたかい日常が、モノクロであるが鮮やかに描かれていた。
紛争が激化し、危険と隣り合わせになっても、幸せな生活は変わらずに続いていく。
それはバディ達一家がプロテスタントだからなのだろうか?詳しくないのでわからないが、紛争という非日常の中の日常が、たしかにそこにあった。

両親の葛藤が、遠巻きに、でも確実にバディの生活に影響を与えてくる感じも良かった。
父親は、いつ紛争が起きるのかわからない危険な地域に家族を残して出稼ぎに出ないといけないことを不安に思っている。生活するためには稼がなければならないが、一緒に生活していないと何かあった時に守ることができないため、ベルファストの街を出て家族と一緒に暮らしたい。
母親は、産まれてからずっと住んでいるベルファストの街が大好き。近所は皆顔見知りで、あたたかく、何よりも人生の思い出が全て詰まった街を簡単に捨てることはできない。そのため、一人気張って子育てをしている。

どちらも、家族を愛する気持ちは同じである。
プロテスタントの過激派がスーパーを襲った事件に巻き込まれ、バディを命の危険にさらしてしまったことで、母親は街にこれ以上残り続ける価値はないと悟る。
大切な人が安全に、健やかに生きてほしいと願うのは、愛の本質の一つだと思う。

余韻を感じる良い作品でした。
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