デパルマ

ベルファストのデパルマのレビュー・感想・評価

ベルファスト(2021年製作の映画)
3.5
1969年の北アイルランドの家族を描いているが、当時の宗教紛争が現在のウクライナと重なって見える。ベルファストの町が手狭に感じられるなんて言う批評も読んだが、舞台セットのようにミニマムで大袈裟にし過ぎないところが粋だし、そもそも8歳の少年の世界つまりバディにとってのベルファストはあそこだけなんだよ。冒頭の紛争シーンの後、カメラはまずバディの見ている近視的な視線を追う。カメラが初めて通りの全体像を捉えるのは、バディが台車の上に登ってからだ。この一連のカメラワークが示すように、カメラは基本的にバディの目線に合わせているので、あの小さなベルファストの一角は一段と大きく感じられる作りにもなってるのだ。また、映画を観るシーンが印象的。「リバティ・バランスを射った男」でスチュワートがウェインらの喧嘩に抗議するシーン、「真昼の決闘」で誰も助けてもらえなかった主人公が一人町を去っていくシーンなどが、主人公らの置かれた状況を表しているのが上手い。というか粋。アガサ・クリスティやマイティ・ソーを読んでるシーンもあるよ。泣ける。さりげなく出すところが粋だね。あからさまにケネス・ブラナー個人の物語、今に繋がる物語にし過ぎないところも粋。ナレーションや台詞で言及せずに、現在の美しいベルファストの街並みをさらっと見せる程度で全然良い。とりあえず粋。サンダーバードのコスプレをするバディ君かわいすぎた。冒頭に映る現在の美しいベルファストの街並みとジュディ・デンチの〆の一言に、戦争地域の明るい未来を願わずにいられない。
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