ゆず

ベルファストのゆずのレビュー・感想・評価

ベルファスト(2021年製作の映画)
4.0
子どもの無邪気さを失い大人へと成長していくという、誰もが人生で経験する転換期を描いた物語。

故郷を離れる時、そこには喪失がある。辛いが、そこから美しい何かが生まれることもある。人生とは、そういうもの。そういったことを振り返ってみたかったんだよ。世界中で人々が喪失を感じている時に。
映画に出てこない、イギリスに到着してからの家族の生活は、とても辛かった。
暴動の心配はなかったし、経済的な機会も与えられたが、僕ら一家にとってはすごく厳しかった。この映画を作ろうと思った理由のひとつには、僕ら家族がこの話を一切しなかったというのもある。本当に、この件について、絶対に誰も触れなかった。アイルランド人は、『ほかにもっと辛い思いをしている人がいるんだから、文句は言わない』という考え方をする。
イギリスに引っ越してから、僕は孤独な少年となった。親戚からも引き離されて、もう消えてしまいたいと思っていた。目立ちたくない、地味にしていようと。
バディは西部劇が大好きで、ベルファストにはどこか西部劇の町を思わせるところがあった。また、子どもらしさを捨てざるを得ない瞬間を演じる子役の姿に、いつも感動させられてきた。

カラーは状況をきっちり見せて説明する上で効果的。だが、モノクロは、より感触を与える。見るべきものを取り除くことで、観客は、より登場人物に近づくことができる。あらゆるものを実際より劇的に見せる効果があるため、9歳の少年にとって、親という存在は実際よりもかなり美化されて見えるものだから、その手法を採用した。

ジョン・ブアマンの『戦場の小さな天使たち』(87)では、幼少期を加速された子どもたちの背景として空襲が描かれている。スピルバーグの『太陽の帝国』(87)でクリスチャン・ベイルが見せた演技は、息をのむほどすばらしかった。ルイ・マルの『さよなら子供たち』(87)は子どもたちの姿に胸を締めつけられる作品。どれも、それぞれの監督にとって、とても個人的な作品だということが伝わってくる。どうしても伝えたいという思いがこもったそれらの作品は、本作品に大きな影響を与えている。

美しい構図の連続
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