すずーや

ベルファストのすずーやのレビュー・感想・評価

ベルファスト(2021年製作の映画)
3.3
「問題なのはお前の劣等感だ」
宗教闘争にしても何にしても、自分の考えが正しい。正しくない人は敵だから攻撃してもよい。こう考える人間はいつの時代もいるんだなと。その攻撃する動機は、実は正義感でも何でもなくて、自信がない自分への正当化だったりする。人に暴言を吐く、殴る、殺す。自分たちが正しいと自らに言い聞かすように。怒りという感情は無力感への抵抗であるという論がある。一理あると思う。僕らは生きていて怒りを感じる瞬間があるが、その怒りはどこから来るのか、そしてそれを相手にぶつける場合、それは自分にとって正当化できることかどうか、自分に問いたい。

「答えが一つなら紛争など起きていない」
世の中の事象は複雑で多面的だ。正しさは一つではない。正しいことが正義でもない。正しさというのはある意味危険なものだ。その正しさを主張するために、証明するために、犠牲にしてよいのか?人を救うためにある宗教は、言ってしまえばただの思想である。思想の正しさを押し通すために、家族を引き裂くことが、かけがえのない生命を奪うことが、大好きな故郷を捨てさせることが、恋する少年と少女を離れ離れにさせることが、許されるだろうか。その正しさを証明したあとで残るものは、しょうもない人間の自尊心がすこし満たされるだけである。

SNSで正しさを武器に、人に攻撃することで小さな欲求を満たす人が増えている。その行為で得られるものは、誰かの大切な人の生命よりもだいじなものですか?