ブタブタ

世界で一番美しい少年のブタブタのレビュー・感想・評価

世界で一番美しい少年(2021年製作の映画)
4.0
ビョルン・アンドレセンを初めて見たのはペヨトル工房の不定期 美術・文学・サブカル雑誌『夜想』の「特集・少年」だったと思う。
それで『ベニスに死す』を知り、トーマス・マンの小説はほぼ実話である事や絶世の美少年タジオを演じた彼はそれ以降公の場にはついぞ現れなかったと。
そして後に断続的にビョルン・アンドレセンの事は『パタリロ』に登場する美少年キャラクターのモデルだとか、映画のキャンペーンで来日してたりレコードを出してた事は知ったけど、後の人生がこんな壮絶な事になってるとは夢にも思わなかった。
約五十年の時を経て老人となり『ミッドサマー』で突然再び姿を表したビョルン・アンドレセン。

殆どホラー映画の様なオープニング。
中身も、というかビョルン・アンドレセンの人生そのものがホラー映画よりも恐ろしい悲劇と苦難に満ちていた。
映画ではぼかされていたけど『ベニスに死す』の後、ビスコンティにほおりだされた彼には無数の男・女問わず群がって来て其れを拒否したり選別したりする事は未だ「子供」だったビョルン・アンドレセンには出来なかった筈。
そう、あまりに酷い。
ビスコンティはビョルン・アンドレセンの一番美しい時を刈り取り自分の映画に利用し後は知らんとほおりだした。
映画祭での会見。
「16歳になって老けた。将来美男になるかも知れんが今はもう美しくない」
本人が隣にいるのによくあんな事が言えるなと。
そのくせビョルン・アンドレセンをまるで自分の恋人の様に横に置いてカメラの前に立たせ宣伝に使う。
「どこに行ってもコウモリの大群に追いかけられている様だった」
もうこの時点から彼の人生の暗転は始まっていた。

ビョルン・アンドレセンの父親は不明。
そして母親はディオールのモデルを勤める程の美貌を持ち、更に詩人でジャーナリストでカメラマンのマルチな才能の持ち主であった事を知る。
そしてビョルン・アンドレセンが子供の頃に森で遺体となってる発見される。
後半は、この母君の失踪と死を調べるビョルン・アンドレセンのパートになり映画は突然サスペンスかミステリーの様相になる。
何かの事件に巻き込まれた事は間違いない。
しかし真相は闇の中。
この母君さえ生きてさえいればビョルン・アンドレセンの人生は違った物になっていのは想像にかたくない。
『ベニスに死す』に出る事も絶世の美少年として伝説になる事もなかったかも知れないけど。

約五十年ぶりの来日で日本旅行を満喫してくれたんだろうか。
だったら嬉しいけど。

あと彼女が超若いのがさすがというか。
ケンカしたり(というかビョルン・アンドレセンが一方的に悪い)するけど仲直りしてよかった。

それから『ターミネーター2』でスターになった美少年エドワード・ファーロングも日本に呼んでCM出したり日本人は同じ様な事をしてたなと。
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