思春期の頃白黒映画を見ることにハマってた時期があって、少ない小遣いをやりくりしながら『ベニスに死す』を借りました。
心理的にも未熟で理解力の足りない当時の私に鮮烈に印象づいたのは、タジオ少年の圧倒的美貌。
当時は私の周りではLINEのタイムラインが今のインスタみたいな使われ方をしていた時期で、感動のままいかに彼が美しかったかを拙い感想文にして投稿した記憶があります。
そんな思い出を引っ張りながら見た、本作。
「よく知らないけど、こんなにも美しい少年が不幸なはずない。ビョルン・アンドレセンはきっと素敵な俳優人生を送っていたのだろう」
このように勝手に思って、また天使のように美しい映像を期待していた。そんな私のような人間がいかに表面的で、愚かで残酷かを、そっくりそのまま映像にされたような作品でした。
キラキラした世界の裏で、美貌がゆえに食い物にされる少年の信じたくない告解。
