鮭茶漬さん

ワース 命の値段の鮭茶漬さんのレビュー・感想・評価

ワース 命の値段(2019年製作の映画)
5.0
9.11映画は数多くあれど、犠牲者の賠償金を決める慈善基金団体という視点の描き方が斬新だった。どこか対岸の火事であった9.11の生々しさは、イラク戦争の報道や、それを題材にした映画を観るよりも、こういった生活に結び付く事実をベースにした物語から感じることができると思った。例えば、企業重役と掃除員の賠償金の違い、受け取り人が同性パートナーだった場合、不倫した子供は保証されるのか、誰が許可するのか、山ほどあるリアルな問題には、ニュースであの惨劇を観ていただけでは思いもよらない程のリアリティを感じたし、そこを解決に導くまでの苦労が、ドラマティックに仕立てられているのが本作の勝因であろうと思う。

最近ではコロナワクチンによる賠償制度や、コロナの飲食店の保証制度などが日本でもあったが。国が保証する限りは、線引きが必要となってくる。主人公は、まずそこを厳しくラインを引く。情は一切捨てた基準だ。健康被害が出る期間、事故に遭ったエリア、企業で働いていたのか・たまたまビルに来ていただけなのかの該当人物など。でなければ、中には棚ぼたや、虚偽での申請も許してしまう恐れがあろう。しかし、先でも言ったように、人の命の重さに差がある等は、おかしいという人権団体が現れる。

また、受け取り人が、犠牲者の同性パートナーではなく、不仲で疎遠な親になるといった問題点など現代的な視点を取り入れたことも評価に値するだろう。中には同制度に感謝する労働階級もいれば、重役などの金持ちは、もっとよこせと裏で主人公をせびりはじめる、こういった既得権益批判も共感性抜群である。実際がどうだったのか知りたいところではあるが。
被害者救済・慈善でやっていたはずの主人公たちが責められる側になり、情か制度か、この駆け引きも非常に難しい、難しいからこそ、どのように展開していくのか目が離せない。胃がキリキリする思いである。必見の作品に間違いない。

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