いったつ

ちょっと思い出しただけのいったつのネタバレレビュー・内容・結末

ちょっと思い出しただけ(2022年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

照生と葉の2人が出会って別れるまでの6年間を、「7回分の7月26日」を通して描く。
7月26日は照生の誕生日で、2人の出会いの日で、付き合った日でもある。
2人にとって特別な1日だから、別れた今でもその日には「ちょっとだけ」互いのことを思い出してしまう。

伊藤沙莉と池松壮亮はもちろん、脇を固める役者陣が全員素晴らしかった。
(照生との距離感の表現が絶妙な河合優実、照生と葉を暖かく媒介する國村隼、コメディリリーフながら実は全てを持っていくニューヨーク屋敷などなど、、 )
屋敷のキャラクターには底知れぬ魅力を感じるというか、喫煙所での
「夏、始まりましたわ!」
「うわあ……えっ?」
の会話一発で葉との相性の良さが伝わってくるのが面白い。

別れのシーンでは、照生が足を怪我しなかったら?無理してでもタクシーを追いかけていたら?ダンスを失った絶望に葉がもう少し寄り添えていたら?と、色々なifを想像してしまう。
それでも結局、この2人なら遅かれ早かれ別れるんだろうなあと思ってしまうのだが。

ラストシーン。日が昇ってもう7月27日になっているが、葉は買ってきたケーキを「明日」食べると言う。
寝るまでは今日=7月26日の余韻に浸りつつ、「明日」には余韻を断ち切ってまた今の日常に戻るという、葉の成熟した態度が垣間見えるのが良い。

「花束」に続き、東京テアトルの新しい勝ちパターンかもしれない。名作だと思います。
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