マツダタケシ

ちょっと思い出しただけのマツダタケシのレビュー・感想・評価

ちょっと思い出しただけ(2022年製作の映画)
4.6
「まぁ、空気を楽しむエモ恋愛作品やし、途中で観るの辞めてもいいか」くらいのテンションで見始めた。でも、空気だけじゃなかったです!最近で言えば、『花束みたいな恋をした』くらい楽しめました。


緻密に描かれているのは、多くの男女が経験してきた“すれ違い“の正体。

作品の切り口は、『One day』をオマージュしてるのかな?主人公の誕生日を起点に、現在から過去に1年ずつ時間軸が戻っていく構成を取っている。

メッセージは、恋愛が楽しいのは最初だけ。なんてありふれたものじゃない!作中放たれる『私たち、最初から何ひとつ会話なんてできてなかったのかもね』というセリフをヒントに物語を追うと、価値観も感性も全く異なる男女の恋愛がなぜ始まるのか、その答えが見えるはず。

挨拶ついでの会話から、思わぬハプニングから、何気ない冗談から、過去の経験や感情の共有から。大勢が口にする「フィーリングが合う」の理由は、たいていこんなもんだと言わんばかりに描かれている。

でも、『ちょっと思い出しただけ』くらいの感覚で蓋をできる恋愛はこんなもんで良いし、「自分も大人になったな〜」なんて微笑みながら今ある日常で幸せを探せば良いだけなのだと思う。

マンションの部屋から眺める朝焼けのマジックアワー。このラストシーンで味わえる感情だけでも、観てよかったなと思えました。