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ちょっと思い出しただけのd3のレビュー・感想・評価

ちょっと思い出しただけ(2022年製作の映画)
4.0
ラブストーリーが苦手だった。
どうして苦手なのか理由を考えてみると、登場人物たちが恋にたいしてまっすぐで、心が高下するさまが、いかにも視野が狭くなっている感じがして嫌だったのかもしれない。
恋愛とはそういうものだと言われてしまえばその通りだろうが、ラブストーリーを求める観客がいれば、そうではない観客もいるということだ。

この映画は、つらくない失恋を描く。そこが目新しく、見ていて気持ちがいい。
過去の恋愛を思い出して、心がかき乱されることがないのだ。

タイトルに偽りなく、ちょっと思い出しただけ。ちょっと思い出すには、満たされた経験が必要だ。どんなに当時は辛くとも、すでに折り合いを付けることができた美しい思い出たち。
本作では1年ずつ時をさかのぼる構図によって、“追憶の追体験”ができる。

恋愛は若いときだけのことではない。いくつになっても経験は積み重なるのだから、年を取っても、ちょっと思い出すことはできる。
そして、ちょっと思い出す行為は、人生をちょっとだけ彩ってくれるのだろう。
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