つめけん

ちょっと思い出しただけのつめけんのレビュー・感想・評価

ちょっと思い出しただけ(2022年製作の映画)
3.6
「これ以上何を失えば 心は許されるの」

絶対にカップルで見るな。

カップルの終わりからはじまりまでの記録。まるで思い出すかのように、時系列の逆順に物語が進行する。「メメント」みたいな。
故にちょっとややこしい。でも「よく考えたらアレってああいうことか」みたいなポイントがあって、それに気づく楽しさがある。月命日に待ってるおじさんの話とかね。

はじめから終わりまで、ふたりの「違い」は変わらないのに、その違いのためにくっついたり離れたりするのが、人間って難儀だなぁとつくづく思わされる。

この手の作品のあるあるとして、ラブラブ期のキツさが目立つほど、別れた後の描写が温度差で滲みるってのがある。今作のラブラブ描写は相当キッツい。故に相当滲みる。
元来池松壮亮が持つオーラと相まって、主人公の悲壮感が凄い。夢と彼女を同時に失ってるわけだからね。逆に彼女の方のニューヨーク屋敷との至って普通なエピソードは、なんか嫌にリアルだった。女の人って男に比べたら昔のこと思い出したりしないし、傍目に見たら訳のわからないやつと結婚したりしがちだよな〜。

告白シーンでのタクシー運ちゃんの爺さんの一連の所作が粋。車から出るとこが最高にカッコいい。ああいうことさりげなくできるようになりたい。

同ジャンルの作品と比べてみると、リアルさは薄いけど悲壮感が強い「秒速5センチメートル」、リアルだけど悲壮感は薄い「花束みたいな恋をした」、そしてリアルだし悲壮感もある今作。さあ、君はどれが好みだ!?

何気にコロナ禍記録映画としての側面もある。社会全体が対策に追われてメチャクチャだったあの頃を思い出しちゃったよ。本当に嫌だったねぇ……みんなの生活が元に戻って良かった。
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