スギノイチ

赤いハンカチのスギノイチのレビュー・感想・評価

赤いハンカチ(1964年製作の映画)
3.8
何だか鶴田浩二映画の様なストーリーだが、ああいう泥臭い情念は無く、あくまで都会的でクールだ。
日活時代の浅丘ルリ子は能天気なモダン娘のイメージが強かったが、こういう陰のある幸薄女も悪くない。

さらにこの映画、敵役の二谷英明がいいのだ。敵役ながら恋敵であり親友であり、さらに黒幕である。
一見、心身ともに充実した紳士に見えるのだが、内面のキャラクターが凄く人間臭い。
親友のふりをしつつも裏では主人公に嫉妬し、全ての点において否定しようと躍起になっている歪み切った男だ。
「俺の力、俺の才能をブチ当てる場所が欲しかった。一度しかない一生を悔いる事無く生きなくちゃいかん。金だ、資本だ。そのために、たった一度だけ命を張って自分の人生に賭けた俺がなぜ悪いんだ!」
日活アクションによく出てくるような単なる悪役キャラに収まらない魅力がある。
最後の中庭の対決は構図も見事だし、裕次郎・二谷英明・金子信雄による三角形の膠着状態から、さらに意外な決着へ。

とにかく、今まで見た裕次郎映画だと一歩抜けている感じがある。
難を挙げるとすれば、中盤で裕次郎がギターを持ちだして、主題歌を歌いながら冬の街を練り歩くシーンだ。
うわ出た!と思った。日活のアクション映画はこれが苦手なんだよなあ…
並木道を歩くラストショットもヨーロッパ映画の様な叙情性がある。
ギターさえ持っていなければ…
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