EnzoUkai

麻希のいる世界のEnzoUkaiのレビュー・感想・評価

麻希のいる世界(2022年製作の映画)
3.7
先ずは中瀬慧というキャメラマン。覚えておこう。非常に良い色が出てる。ピントの当て方も絶妙。サイズ感もバッチリ。

少女幻影のファンタジー。
捉えようのない質感の二人の少女。
生々しさもあるが見ていてどこか距離を感じる。
この距離感こそが映画的で、没入させない監督の技量を感じる。
この手の映画は入り込んでしまったら、隣の女の子の残り香や目の前の男たちの汗臭さを思い起こしてしまい生理的な感覚でとらえてしまう。
破滅していく少女を対岸から眺めているから良いわけなのである。

塩田明彦監督は非常に上手な監督だと思う。と言うのは、発注された作品もそれなりに面白く撮ってしまう。そういう点においても日本の映画界でも屈指の実力派。
でもやっぱり作家性を全面に押し出した作品が私個人的には好み。
(まぁ手堅くヒット作を生み出しながら、自分の為の作品を撮っていくという作家人生を送っていらっしゃるのだろうけど)

人間の儚さ、特にその儚さを少女に投影するのは劇的であり、非常に絵になる。
こういうものを見たいと思うのは人間の性(敢えて男の性とは書かない)だと思う。
好みの問題とは少し違うとは思うけど、見方や感じ方といった表面的なものではなく、文学的な素養やら、もっと言うなら人生経験みたいなものに影響されてしまうところもある。
ある意味、扱いの難しい作品なのかもね。
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