りっく

麻希のいる世界のりっくのレビュー・感想・評価

麻希のいる世界(2022年製作の映画)
3.7
基本的には高校生の三角関係と彼らの親までの狭い射程で物語は展開する。その中の人間同士の関係性や、彼らと社会や外部との関わり合いは、常に緊張感が漲っている。それを塩田明彦は的確なカットの積み重ねによって、映画的に見せていくのがいい。

そこで何にも属さず、従わず、媚びずに突破していく麻希の強さが際立つ。センチメンタルでエモーショナルな展開になってもおかしくないところを、彼女の存在がそれを拒絶し、クールでドライな距離感を保つことに成功している。

由希は言葉を失い、麻希は記憶を失う。ラストに再会するふたりのやり取りと、ラストカットの由希の頬を伝う涙がひたすらに美しい。
りっく

りっく