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叫びとささやきのヨウのレビュー・感想・評価

叫びとささやき(1972年製作の映画)
4.4
三姉妹の視点から露わになる女性たちの心の叫び。身近に迫り寄る死。親和性の中に垣間見える不協和音。犇犇と伝わってくる孤独と悲哀。曝け出される激情。人間という生き物は一見普通に見えても皆が並々ならぬ苦しみを内に秘めている。走馬灯のように思い返される和気藹々としたあの頃の記憶。いつの間にかズタズタになってしまった関係性。求め損なった肉親間での愛情。私たちは大切な人たちから貰い受ける思いやりと優しさ、共感や温もりさえあればもう望むものはない。当たり前だけれども見落としがちな真理にハッとさせられ、姉妹たちの陥った顛末とも相まって悄然とするしかなかった。自分自身の兄弟関係にも通ずるところがあり、余計沁み入る。叫びとささやきはかくして沈黙に帰する。閉幕で示される言葉が何故だか頭から離れない。赤を基調とした驚愕の映像美と人間の闇を澄んだ目で洞察したような洗練極まるストーリー性で鮮烈の映画体験へと誘うイングマールベルイマンの一大的傑作だ。
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