1963年公開。身を寄せ合い貧しくも楽しく暮らす人間主義者の旗本五人組と、江戸の庶民を蹂躙する傍若無人の旗本ヤクザ集団との抗争を様々な人間模様を交えて描く、素数系痛快娯楽人情時代劇。ストレートな勧善懲悪物語で滅法面白い。漢気溢れる片岡千恵蔵を筆頭に、里見浩太郎、山形勲、大坂志郎、千秋実の五人の役者それぞれの持ち味を活かしたキャラクターの描き分けが見事。彼らが仲間の為に決死の思いで利他的な行動に打って出るラストの大立ち回りには胸が熱くなる。集団アクションによる殺陣も見応え十分、例の大仰なSEが無いのも好み。
主人公を陰ながら支える岸田今日子の佇まいがクールで麗しく、若き冨士真奈美がラブリィ。高田浩吉が演じる主人公を慕う人気歌舞伎役者の清々しさも印象に残る。87分。

「どっこい道が違うぜ！てめえ達が行くのは三途の川、その先の地獄と言う所だあ！」

いわゆる此村大吉ものの1本かつあらすじは昭和33年の名作『大江戸七人衆』のリメイクでもある。小沢茂弘作品には珍しく大吉と仲間たちとの触れ合い助け合いの場がほのぼのとしていてよい。美術の井川徳道の仕事もなかなか。

昭和38年という東映時代劇黄昏期の作品にしてはいい出来なのだが、やはりラス立ちへの盛り上げとチャンバラの見せ方は松田定次の『大江戸七人衆』の方が上。つばぜり合いや斬撃に微かな効果音が入ったり、ビックリナイフ式の刃先や傷口から流れ出る血の描写の仕掛けなどは後の任侠路線の伏線。

キャストでは山形勲(『大江戸七人衆』ではラスボス)の気のいい浪人や岸田今日子の千恵蔵御大に負けない貫禄もよい。悪ボスを演じる原田甲子郎名演技。

東映新路線時代劇の第一作。集団抗争時代劇の萌芽。
分かりやすく言えば主人公たちとて死ぬこともある。より血の匂いのする殺陣と物悲しさを残すラスト。
ストーリーは大江戸七人衆と被っていながらも、演出やキャスティングに時代の移り変わりを感じる。