しん

名付けようのない踊りのしんのレビュー・感想・評価

名付けようのない踊り(2022年製作の映画)
4.2
東京国際映画祭にて鑑賞。エグいほど豊かな時間が流れていた。田中泯という躍り手の躍りを犬童一心という監督が撮っている、ある意味それだけの映画なのだが、それだけで十分だった。躍り手と観客との間にこそ躍りがあるという彼の思想が、スクリーンを通してでも痛切に感じられた。心のなかでは彼と一緒に手を上げ、ゆったりと下ろしていたような気がする。

犬童監督の編集も素晴らしかった。終わったあとのQ&Aで、監督は田中泯の躍りを実際の会場で見たあとの余韻が感じられる作品を志したと語っていたが、その志は十分に達成されていた。普通の映画ではあり得ない尺、あり得ないアップの連続、言語の選択など、この映画に必要なことをしっかりと示しきっていた。撮り方に関しても素晴らしいと評価できる。

きっと本作は劇場公開になれば多くの人に刺さるだろう。いや、刺さってほしい。田中泯が踊っている時間は、何ものにも変えがたい豊かさを僕たちに示してくれる。とりわけ、夢の島の文脈とラストは圧巻である。
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