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アルピニストのparaのレビュー・感想・評価

アルピニスト(2021年製作の映画)
4.5
ただひたむきに自分のやりたいことをやる。

序盤、いきなり手汗ぐっしょり。そして汗は凍りつく。

誰かにひけらかすという発想のないカナダの若者マークが、偉業を目指すのではなくただ登りたいから登るという実に素朴なアルピニストとして、またソロクライマーとして次々と難関に挑む姿を捉えたドキュメンタリー。

下手くそながらもかつて登山、アイスクライミングに夢中になっていた時代があり、
自分のレベルではありえない卓越したテクで軽々と難易度の高い山を制覇する姿に心臓バクバク。
(ザイル確保なしのアイスの緊迫感!)
その大胆さから無謀とも思えるような冒険と冷静に状況判断して進むスタイルに畏敬の念を抱く。
未踏ルートで常にソロで挑んできた彼がザイルパートナーと共に挑戦したのは偶然なのか。
(魔物の囁きかな。全く違うけれど、何となく加藤文太郎とか松濤明の名前が浮かんだ。)

山では目の前の事象にだけ集中するからスッキリするし、死を隣に感じるから生がくっきりと輝く。あのなんとも言えない感覚は普通の生活では感じたことがない。
そして下界では決して観ることのできない自然の神々しいまでの美しさ。
取り憑かれると己れの力の限界を試したくなり、徐々にエスカレートする。

山そして自然は厳しさと美しさ故に人を惑わし、美しすぎてヒトの命を喰らうのだ。
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