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モンタナ・ストーリーのhasisiのレビュー・感想・評価

モンタナ・ストーリー(2021年製作の映画)
3.4
米国、北西部に位置するモンタナ州。
雪の季節。
20代のカルは、疎遠になっていた実家である牧場に久しぶりに戻っていた。
2年前に母が亡くなり、父も昏睡状態になったのが理由だった。
父の介護資金と今後のことを考えて、カルは牧場の資産を売却しはじめる。

監督・脚本は、スコット・マクギー。デヴィッド・シーゲル。
2021年に公開されたドラマ映画です。

【主な登場人物】🤠👫
[ヴァレンティーナ]親の友人。
[エース]看護師。
[エリン]姉。
[カル]弟。
[ジョーイ]ヴァレンティーナの息子。
[ムッキ]別の牧場主。

【感想】🏔️🌲🌲🚗
マクギー監督は、1962年生まれの男性。カリフォルニア州出身です。
同性愛者であることを公言しています。
1994年から映画製作をはじめて本作は8本目。監督としては6本目になります。

シーゲル監督も男性。詳細は分かりませんでしたが、マクギーといつも一緒に映画を撮っている相方なので、同世代だと思われます。

🐎〈序盤〉🚙🙍🏼‍♀️
西部の田舎の牧場で過ごす『ブロークバック・マウンテン』のような雰囲気の映画。
場所に不釣り合いなクラシック音楽が流れて、カルとエースの間で恋愛が始まりそうだけど、異母姉弟の話。
両親がリタイアして、弟のカルは牧場を畳む予定。寂しい。

ゆっくりして長くて眠い。
年寄りが好みそうな映画はチューニングしやすくて楽。配信の話題作は途中離脱が多くて、老害まっしぐら。レビューを書きたい映画に出会える確立が減っているし、先が思いやられる。

🐎〈中盤〉🪟🛌🏼👨🏿‍⚕️
姉がトラブルメーカー。
田舎の静かな暮らしに刺激を与えてくれる。

祖母を思い出した。
将来、わたしが60才になって、寝たきりの親を介護している風景を連想させる。
きっと監督が自分の人生を振り返っているのだろう。

カルがトラウマについて語りはじめる。
コロナで流行った家族の不仲の話。
父と姉に関する暴露話を弟がする。
被害者視点だけど、攻撃的。
映画にしてしまったら、家族に迷惑がかかるわけで。
両親の存命中に話すと、家族の溝が深まって孤独になるので、リタイアが切っ掛けになっている。
その辺の気遣いは『フェイブルマンズ』の公開が遅くなった理由と共通している。

姉の奇功の理由が分かり始める。
わたしとは物事の捉え方が違うので興味深い。他人の話しを聞くのはどんな内容でも刺激になる。
(映画や公人であればストレスも溜まりにくいし)

🐎〈終盤〉⛈️🏡
売却作業がモキュメンタリーのようで楽しい。広大なモンタナに残る微かな雪が綺麗で癒される。

プチドライブでロードムービー気分。欲張りな作りが好印象。
(その分、長いけど)

[露天掘り]🌀⛏️👷🏼
鉱石の採掘方法。地表から渦を巻くように地下に向かって掘ってゆく。
劇中に登場する寄り道先、コッパー・ヘッドは架空の鉱山だ。
恐らく、毒蛇がとぐろを巻いているように見えるからつけた名前だろう。
ロケ地は、コロラド州のジェファーソン郡にあるゴールデンサンライト鉱山である。

エリンは「ダンテの地獄の層を思い出す」と話していたけど、確かに蟻地獄のようで、よく似ている。
親を責めるだけでなく、罪の意識があるから、人間味が感じられていい場面。

嵐の夜・クライマックス。
姉の告白。
壮絶な言葉の殴りあい。互いの心に眠っていたわだかまりが噴出して、ぶつけられる。
静かな映画だけど、ハートが熱い。
愛情が強いほど憎しみも強くなる。

ただ、個人的には、もっと言葉の掛け合いにして、エリンの台詞を長めにしてほしかった。ここは、エリンの鬱憤を受け止めるパートのはずなのに、カルがすっきりすることに重きが置かれていて残念だった。

【映画を振り返って】🏔️🐎🐎
西部を舞台にしたロマンスかと思えば、リアル路線の近親憎悪で驚かされました。
SWやガンダムのようにエンタメに全振りすると笑えますが、ドラマだと自分の人生と重なって気分が沈む。

ただ、50代の終わりに撮られているので、ずいぶん記憶が風化しているし、内容もあっさり。主題ではありますが、軽めなので胸糞って程ではないです。
音楽も爽やかだし。

監督と同じように、親への憎しみに悩まされている人には、気取らず、せきららな内容なので共感しやすいはず。
若い人にとっては、これからの自分の人生を想像させる話かも。

私小説に近く、人によっては名作になりえると思います。
ノートに書いて閉まっておきたい思い出も、映画にして公開することで世界の誰かの心に響くなら価値は高いですね。

雑談と風景が楽しめて、のんびりできます。
モンタナの寂しい風景に、美男が映えるので、目の保養にもいいです。
静かなので、流しっぱなしで周回しても邪魔にならず、姉弟と一緒に癒されてゆくような暖かな映画でした。
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