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機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島のKEiGOのネタバレレビュー・内容・結末

3.2

このレビューはネタバレを含みます

教訓「『THE ORIGIN』は『THE ORIGIN』であり、決して『ファーストガンダム』ではない」
鑑賞して得られた教訓です。とはいえこれだけだと新作を叩くだけのオールドタイプになってしまうので、良かったところから話していきましょう笑

とにかく戦闘シーンが良かった!現代の作画・CG技術で動くガンダムとザクの戦闘をスクリーンで観ることができたのは非常に貴重な経験だったと思います。なんと言ってもサザンクロス隊の高機動型ザクがぬるぬる動くのが良かった。アフリカの地形に合わせたデザートタイプのペイントも最高にcool。ミリオタの心がくすぐられる。パンフレットに“サザンクロス隊は装備品が一人ずつ異なり、それを上手にマウントさせるのが大変だった“という旨のコメントがありますが、そのおかげで超カッコいいザクが完成している。ガンプラ作るのは大変そうだけど…笑

声優陣も良かったですね!ドアン役の武内くんは納得の芝居でした。ホワイトベースのクルーももちろん世代交代が進んでいますが、個人的にはそこまで違和感なく聞けましたよ。ていうか『ファースト』から43年経っても変わらずアムロができる古谷さんが化け物すぎます。

残念だったのは2時間近い尺がありながら本作の主人公たるククルス・ドアンの過去や内面があまり深掘られなかったこと。せっかくファーストの、それも“ククルス・ドアンの島“を映画化するなら、テレビシリーズでは描き切れなかった彼の過去、そこから生まれた後悔と自責の念についてもっと知りたかったし、そこが観たかった。
“ククルス・ドアンの島“はそのコアに戦争があるお話。だからこそもっと重厚な人間ドラマを期待して鑑賞したが、想像以上に淡白な描かれ方で狐につままれた気持ちに。「そうだ、安彦ガンダム…てか『THE RIGIN』って歴史の教科書だった」とここで気づく。比べることが是とは思ってないけど、やっぱり僕はドロドロな人間ドラマが展開される富野ガンダムが好きだなぁ。

安彦さんは「監督を務めるのはこれが最後かもしれない」と発言されております[1]。そういう意味で本作は(この言葉がふさわしいかは分かりませんが)餞だったのかもしれません。
安彦さんの絵は最高です。パンフレットの見開きページは痺れました。彼の絵には安彦さんにしか描けない世界観と迫力があります。
だからこそ心を鬼にして言いたい。せっかくお金をかけて映画化するなら、「ファーストガンダムって面白いかもしれない…!」と新規層に思わせてあげられる内容にしてほしかった。シリーズの多さや古い作品ゆえの作画で倦厭されてしまう、いつからかガンダムは敷居の高いコンテンツになっています。「『逆シャア』は最高なんだ、でもそこに至るまでには少なくとも『ファースト劇場版3部作』が必要で…」と新規に勧めづらいのがガノタの本音。それゆえ『THE ORIGIN』や『ククルス・ドアンの島』にはファーストを観るモチベーションを高める役割を期待していました。

そこ☆あに[2]でくむさんがおっしゃっていましたが、ぜひ若手が作るガンダムを観たいものです。
そうしたら少なくとも戦闘中にヤギが逃げ出すくだりはなくなるでしょう…。


参考
[1] 安彦良和監督:「ガンダム」映像化は「最後」発言の真意 「ククルス・ドアンの島」, MANTANWEB, https://mantan-web.jp/article/20220617dog00m200064000c.html
[2] そこ☆あに, そこあに「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」特集 #743, https://sokoani.com/archives/14666.html
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