みむさん

キリング・オブ・ケネス・チェンバレンのみむさんのレビュー・感想・評価

3.8
ほぼ(全て?)リアリリタイム進行、ドアを隔てた部屋の中と外で繰り広げられる絶望的なワン・シチュエーション・ドラマ。
モーガン・フリーマンのプロデュース。
無実の黒人男性が白人警官に殺された2011年の事件を映画化。「デトロイト」「フルートベール駅で」と同じ箱に入るなぁ。

結末がわかってるので、この人殺されるんだ…と思いながら観ることになり、異様な緊張感とハンパないヒヤヒヤ感が続く。

明らかに黒人差別あり、しかしチェンバレンにも不運が重なった。
不運×差別の最悪の組み合わせ。
警官の中にも良心がある人はいるが、組織や上下関係に押し潰され、助け船になりそうな医療ホットラインは機械越しなので指示を出すしか出来ず。

これ絶対いろんな意味でまずいパターンだと序盤から感じる。
本人の状態や警官の苛立ちから、無実を訴えても事が収まらない。
すんなり警官の指示に従っていたら彼は助かったのだろうか?そうとは言いきれない差別の背景。

冷静な人々、良心がある人々はことごとく押しやられ、観ながら「もうやめて…」と言いたくなるような状況が続いてしんどい。

警官がもう少し冷静だったら、チェンバレンが機器を誤操作しなかったら、近所や親族の言うことを聞いてくれたら…そもそも差別がなかったら…。
多くの「たら・れば」分岐点をすべて悪いほうに進む。

差別、冷静さを失った権力の暴走で一人の命があっけなく終わってしまう。

絶望的な映画だった。

実際の音声が流れるが、劇中そのまんま誇張なく再現していたんだなと思うと余計に絶望的。