がちゃん

てなもんやコネクションのがちゃんのレビュー・感想・評価

てなもんやコネクション(1990年製作の映画)
3.8
公開されたのは1990年、バブル経済絶頂期。
日本中が浮かれていたそんな時代に制作された無国籍コメディの怪作!

香港の港に流れ着いたボートピープルがそこに住み着き、勝手に家を建て、その地は次第に村になる。

そこに住む一家が幸運にも豪華海外旅行に当選。
青年・遅九扇はディズニー・ランドを夢見て日本にやってくるが、何かの手違いで着いたのは大阪。

ツアー内容も豪華と真反対のドケチツアー。
ツアーコンダクターも、広東語を覚えたばかりでたどたどしい少女・クミ。

クミの運転するマイクロバスで大阪名所を観光する遅九扇だったが、車に置いたままにしてあった荷物や所持金を全部盗まれてしまった。

この旅行会社はどうやら無許可営業らしく、警察に届けさせたくないクミらは、なんとか金を集めて遅九扇を東京に送ることができた。

そして、様々な困難を乗り越え、遅九扇は香港に帰国するのだが、
その家は、巨大企業の地上げの対象地になっており・・・

前半の大阪の描写だけで満足。
バブル時代の大阪なのですが、所謂観光地でないところがポイントですね。
特に西成の描写が秀逸です。

日本一治安の悪いと言われることで有名となり観光地になってしまった西成。
今や面白半分のYouTuberらも押し寄せるようになった西成とは違い、あの頃の本当に治安が悪かったころの日雇い労働者の街、通称あいりん地区。労働者、浮浪者、違法路上販売者も含めてありのままに描かれています。
地下鉄堺筋線『動物園前』駅に上がった時の小便臭いにおいが立ち込めていた頃の西成。

遅九扇を招待するグルメも立ち食いうどん。
飛田新地もそのままで登場します。
もちろん、大衆串カツも登場です。

この撮影はおそらくゲリラ撮影だったのではないか。よく撮れたなあと思います。雑踏からの日常会話が聞こえてくるよう。

素人さんだと思われるエキストラの方々の演歌が楽しい。
通天閣の下・新世界ももちろん登場する。
もちろん、今のようにインバウンド外国人観光客があふれかえっている新世界ではない。
花火が大安売りされているシーンはおそらく松屋町辺り。商店街は上町台地に向かって限りなく登っていく空堀商店街か。

大阪人である私が本当に案内したい、ガイドブックに載っていない大阪が満載なのです。

ここまでで十分満足したのですが、
後半は、日系企業の地上げとの対決。
そういえば、この頃にジャパンマネーは海外の不動産を買い漁っていましたね。

香港の夜の街のシーンもゲリラ撮影だったのではないか。
歓楽街の描写は、今まで他の映画で見てきた香港の街とは明らかに熱気が違う。

遅九扇ファミリーは、偽ブランド商品販売などで生計を立てている一家だったのだが、そんな彼らが頭脳戦で地上げに挑むのが後半。
作戦はなかなか面白いのですが、ちょっとごちゃついてしまったのが残念かな。

やっぱり本作は前半の大阪の描写が魅力。
公開されたときの表の大阪は、『花と緑の博覧会』(通称・花博)が開催され、大型水族館『海遊館』がオープン。
一方、70年大阪万博のシンボルだった・エキスポタワーが閉鎖した年。

華やかだったこの時代の大阪の裏メニューのような大阪観光が楽しめるのが本作!
風俗的文化価値のある作品だと思います。



英国領から中国返還になる香港人の本音もチラリ・・・
がちゃん

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