黄金綺羅タイガー

マクベスの黄金綺羅タイガーのレビュー・感想・評価

マクベス(2021年製作の映画)
3.7
わざわざモノクロで、わざわざスタンダードサイズで、わざわざセットだと分かるセットで、わざわざシェイクスピアをやるという手の込みよう。
それなのに、その古風な造りから浮かないようにバレないようにと丁寧に精緻に作られたCG、計算されたライティング、幻想的でありながら、現代の感覚で作られた美しいトランジションなどの最新技術をふんだんに使っている。
2022年(制作は2021年か)にわざわざこんなことをするのは、よほどこのスタイルで作りかったのだろう。
全く商業向きではない映画。
でも、まぁ美しい。
フラクタルやら、黄金比やら、アルゴリズムやらの数学的な美しさ。
字幕が本当に邪魔だと感じるくらい。
でも字幕がないとなんのことだか解らない。
字幕を読んでもなんのことだか解らない。
マクベスは初見だったからなおさら解らない。
ハムレットやら、リア王やら、ロミジュリやらをなんとなく知っていたから、ああ、シェイクスピアのいつもの手口ね、と背伸びして、内容を知らないことをなんとなく誤魔化しながら観たものの、これはマクベスの内容を熟知したうえで観なくてはならない映画だ。
英語が母国語でないことを呪ったのはこれで何度目だろうか。
自分の不勉強さを呪ったのはこれで何度目だろうか。

モノクロ時代の映画をよく知ったうえで、英語をネイティブくらい聞き取れて、幼い頃から教科書でシェイクスピアに馴染んでいるくらい理解していないと、この映画を心底愉しむことは出来ないのかもしれないと思うと本当に悔しい。
スコッチ片手にナッツでも嗜むジェントルマンにならないと駄目なんだよ、ショウユとナットウで育った僕には無理だよ、とすこし切なくなった。

でも、こちとらMIZOGUCHIの『雨月物語』を字幕なしで観れるんだから!
SCONEはたしかに美味しいけれど、こちとらお正月にはOSECHIがあるんだから!
と、強がりを心の中で唱えながら、寅さんをNetflixで観ながら、OMOCHIを食べながら、このレビューの筆を置こうと思う。