Jun潤

夜を越える旅のJun潤のレビュー・感想・評価

夜を越える旅(2021年製作の映画)
3.3
2022.11.15

予稿を見て気になった作品。
予告の感じからホラー的要素が含まれているのかと思い、若干食指が鈍りましたが、どうやらモラトリアムもテーマに含まれているという大好物作品の予感。
ホラー×モラトリアムなんて想像がつきませんが、どのような作品に落ち着くのか見届けることにしましょう。

漫画家志望の春利は、学生時代のゼミ仲間と共に旅行に出かけた。
3年ぶりということがあってか、過去の確執があってか、かつての思い出とは打って変わってイマイチ盛り上がり切らない。
夜、応募していた漫画賞に落選していた旨の連絡が恋人からあり、自暴自棄になりかけるが、突然かつての想い人・小夜が現れる。
過去の気持ちが呼び起こされ、束の間の逢瀬を味わう2人だったが、明け方に帰った小夜のことを友人に告げると反応が芳しくない。
その時突然、春利は謎の世界に引き摺り込まれ、悍ましい姿の小夜と対面する。
果たしてこれは現実か、悪夢かー。

いやガッッツリホラーやないかーーい!
普通にビビり散らかしてしまいましたわ。
しかも洋画ホラーのような宗教的なものが起源というわけでも、ジャパニーズホラーにありがちな理不尽な呪いや悪霊の類いというわけでもなく、死してなお残る愛なのか、独りよがりに求め続けた他者への愛なのか、それとも追い詰められた人間が出す狂気なのか、終わってみれば解釈の分かれそうないい意味でのモヤモヤエンドでした。

しかしその過程がな〜。
序盤の映画らしいテンポもノリもないダラっとした雰囲気を、春利が異世界に引き摺り込まれる場面でガラッと変えてきそうな感じでしたが、それ以降もどこかシュールというか、いまいちホラーにも振り切れていない、要所要所でビビらせてくるけど、一本軸が通っていないような感じがしました。

個人的な解釈としては不思議ホラー要素はどこにもなく、学生時代から執筆し続けてるのに完成しない原稿への情熱が、旅行と落選を経て狂気に変貌し、自身の過去に見出したかつての想い人の存在によって結実したのかなと思います。
結末だけ見れば人間の狂気が表出するスリラーですが、過程があまりにもホラー&シュールすぎるて……。
Jun潤

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