いしくら

リコリス・ピザのいしくらのレビュー・感想・評価

リコリス・ピザ(2021年製作の映画)
4.5
クーパー・ホフマンの微笑みで涙ぐむ。

『リコリス・ピザ』はPTAのフィルモグラフィーでも最も軽い映画だと思うので、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』や『ザ・マスター』系が好きな人が肩透かしを食らうだろうな、と。とにかく、この映画は悲劇が起きない。
また、人種問題、LGBTQ+、#MeToo運動、格差社会、コロナ禍など、現代の社会問題に繋がるような象徴性も持ち得ておらず、背景として当時のオイルショックや同性愛者の苦悩は描かれているけど、作品の軸ではない。
この映画は、「あの時代はよかったナァ」を懐メロに乗せて紡いでいる、甘ったるい映画という気がした。まるで、劇中の主人公二人が結婚して、披露宴で流す映像を映画にしてPTAが撮りましたよ、みたいな。

人間の愚かさや世界が抱える問題をあぶり出すことも映画という芸術が持つ一つの意義かと思うけれど、混迷を極める時代において、映画館の暗闇でロマンチックな夢を見させてくれる、というのも映画にしかできないことだと思うのです。

いやーマジで最高だった。一番ウケたオマージュはイーストウッドの愛のそよ風のシーンだった。
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