mndis

リコリス・ピザのmndisのレビュー・感想・評価

リコリス・ピザ(2021年製作の映画)
4.0
浅いコントラスト、褪せた色彩や白飛びする空やハイライトは16mmの低予算映画の雰囲気を漂わせ、さらにそこに恋愛ストーリーも加わる事で、なんかPTAの9作目にしてデビュー作と思えるぐらいフレッシュな映画。

亡くなったフィリップシーモアホフマンの若い息子や演技未経験のバンドHAIMのアラナハイムなど若手と一緒に組んだというのも、今作の低予算風なフレッシュなスタイルと関わっていそう。(自身も新たな気持ちで映画制作したいという気持ち)


ませた15歳の子役出身の男の子と冴えない25歳の女性が仕事のパートナーなのか恋人なのか分からない関係で映画が進んでいくとという話がとても新鮮で良い。

少年が落ち着いた綺麗な大人の女性に憧れる的な映画はあると思うが、15歳の子供に25歳の女性が尻を叩かれ再起する様な展開は、そこへのPTAなりのカウンターや、彼らしい捻くれた物の見方がこの変化球な設定・ストーリーに出てる気がする。

主役の2人の見た目も脇役っぽいのも、なんか似ていてそこも良い。

事業で成り上がっていく感じや途中の脱線パート(ガソリン切れるあたりパート)なんかはブギーナイツっぽいし、子役の感じはマグノリアっぽいし、年に離れた男女に主導権の握り合いは「ファントムスレッド」っぽい。

そもそも振り返ってみるとPTA初期は暴走する男がメインに描かれ、「ザ・マスター」から暴走する男の裏で女性が操るという力関係が描かれて始め、前作の「ファトムスレッド」や今作では男と女の主導権の争いを描くという変遷を追っていくとPTA自身の人生感の変化みたいなものも感じる。

前妻で歌手のフィオナアップとのアーティスト同士の結婚生活がトラウマでそうなってなければ良いのだがw
一方で現在の奥様も「インヒアレントヴァイス」と今作もちょい役で出てる。



少し前にタイウェスト監督の「X」を観たが、そこで描ききれてない部分(恋人同士の嫉妬の部分)をこのリコリスピザでは全編通してやってる所に、「そうそう、それそれ!PTAやっぱり分かってるぜ」となった!

原始的だけど人が必死で走る姿は、本気感が伝わって良い。特にアラナハイムの走り方が猫背で肩が上がってておもろい

あと電話で言えなかった一言がラストにくると思うと青春感じる

面白いけど、冷静になるとPTAの過去作をまとめて薄めた感はあるかなと。。
mndis

mndis