MasaichiYaguchi

偽りのないhappy endのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

偽りのないhappy end(2020年製作の映画)
3.7
園子温監督の下で長く助監督を務めた松尾大輔さんの長編監督デビュー作は、妹が行方不明なったエイミとヒヨリが失踪の真相を探るミステリーが、滋賀県の琵琶湖周辺を主舞台に繰り広げられる。
中学卒業後に上京したエイミは、故郷の滋賀で一人暮らしの妹・ユウに東京での生活を勧める。
最初は拒みながらも、急に東京に来ることを承諾したユウだったが、引っ越し早々に行方不明になってしまう。
そんな中、エイミは同様に妹が行方不明になっているヒヨリと出会う。
やがて地元の琵琶湖で若い女性の遺体が見つかったとの連絡が警察からエイミに入るが、その遺体はユウではなくヒヨリの妹だった。
ここからエイミの妹探しと、ヒヨリの妹の死に対する真相を探る物語が本格的に幕を開ける。
彼女らの捜索にキーとなる人物が登場するが、この謎めいた人物の行動で益々真実は「藪の中」状況に陥っていく。
業を煮やした彼女らは思いも掛けない強硬手段に出て、隠れていた真実が少しずつ紐解かれていく。
ベールに包まれていたものの中には、エイミが何故中学卒業後に上京したのか、一人で故郷に残っていたユウの意外な日々、キーとなった人物とヒヨリの妹との接点も明らかになる。
血の繋がりがあっても、人には分かり得ないことがある。
理解するには、相手と向き合い、更に想像を巡らさなければならないこともある。
本作では、それが出来ずに途切れた関係の糸が縺れて絡まり、予想だにしない結末を導く。
コロナ禍で人との距離が保たれ、マスク越し、フェイスガード越しでの遣り取りになるこの頃、社会がこのような状況だからこそ、相手を慮ることの大切が伝わってくる。